Shared Lines Project

ニュージーランド・クライストチャーチと宮城のアーティスト間で2012年から始動した芸術交流「Shared Lines プロジェクト(Sendai–Christchurch Art Exchange)」は、自然災害による被災経験を抱える両地域をつなぎ、芸術を通じて地域の再生力や国際的な連携を切り拓く試みです。

2011年の東日本大震災とクライストチャーチ地震を背景に、同様の災害経験を持つ地域間の芸術的交流を通じて、被災地の文化的表現を取り戻し、継続可能な国際交流を築くことを目的にスタートしました。プロジェクトは芸術環境を活性化するとともに、国内外のアートコミュニティとのネットワーク強化し、またレジリエンスを高め合うことを目指しています。 震災体験に基づく芸術交流から始まり、2020年以降もその理念を継承しつつ、先住民文化や多文化共創、地域の持久力向上へと展開しています。

今後も、アートによる文化的再生・災害の語り継ぎ、シンボリックな表現の創出、地域コミュニティへの接続、そしてアートプロデューサーとしての人材育成を念頭に、さまざまなプログラムを展開していきたいと考えています。

2012~2013年には、両地域で相互の展覧会やシンポジウムを開催し、多様なジャンルの作家が参加。芸術を通じた文化復興と協働を促進し、今後の継続的な国際交流へとつながるしくみとなりました。

2017年には、ウェリントンにて、アートと都市デザインによって地域の「レジリエンス(強靱性)」を構築する契機として企画した「Shared Lines: Wellington」を開催。ウェリントン湾では、宮城県浦戸諸島で五十嵐靖晃と地域住民が編んだ《Sora-Ami: Knitting the Sky》展示するなど、トーク、パフォーマンス、ワークショップなどを1週間にわたり展開し、Urban Dream Brokerageなどのビジネスや都市計画関係者との連携を図りました。

2019年には、2016年地震により被害を受けたNZカイコウラ(Kaikōura)にて、地元アーティストよる地震後の満月と援助艦隊の風景を描いた象徴的な絵画《Supermoon Aftermath – Kaikōura》や五十嵐靖晃が地域住民とともに《そらあみ》を制作し、カイコウラの海辺にて《そらあみ-カイコウラ-》などを展示。被災地域コミュニティに深く根ざし、地域の記憶を共有する参加型プログラムを展開しました。

2020年以降は特に、COVID19パンデミックなどの社会的境遇を共有しながら、文化的・災害的共感の深化と、地域社会の回復、地域文化の再考・再興を図っていきました。特に、コロナ禍の制限により国際交流が困難になった2020年〜2023年においては、オンラインディスカッション充実化、地域文化への再興に重点を置いた活動を行いました。

マオリの背景を持つアーティスト兼当プロジェクトメンバーLinda Leeは、先住民文化(mātauranga Māori)の視点を作品やプロジェクト運営に強く取り入れ、文化的アイデンティティや歴史を非言語的な表現を通じて再構築し共有することに取り組んでいます。

2020年には塩竈のビルドスペースにて「Shared Lines: Aotearoa in Japan」という展示を開催。マオリ文化の提示と対話を扱うインスタレーションを通して、文化の掘り起こし・共有・発信の意義を改めて再認識する機会となり、現在のそれぞれの地域の文化の掘り起こしと共有の活動につながっています。

現在は、より広域な国際・地域交流へと展開しながら、先住民文化や多文化共創、地域の持久力向上、芸術による都市とコミュニティの「強靱性」を育む試みへと深化しています。